ダンボール「平等院鳳凰堂」製作記録
平等院鳳凰堂の製作記録を綴っていこうと思います。作品が完成してから3年近く経ってからの記録になりますが、当時の思いなどを入れつつ紹介していきたいと思います。
発表日 :2013年11月29日
製作期間 :5ヶ月
材料費 :300円
素材 :ダンボール、接着剤
高さ :約30cm
幅 :約80cm
長さ :約30cm
諸元
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平等院鳳凰堂 エクセルでお絵かき
守礼門、法隆寺五重塔、松本城は観光で行ったことがあり、動画で使う写真素材がありました。平等院鳳凰堂については行ったことがなく、手元に写真がありません。そこでエクセルの図機能を使って絵を描くことにしました。これで動画を作ることができました。
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製作開始
図面…というほどでもありませんが、ある程度の寸法出しを行い、部品を製作する参考にします。
図面…構想図です!
図をもとに部品を作っていきます。まずは翼廊から。壁と組物周りから取り掛かり、屋根や柱へと工程を進めていきます。
組物周り。この時点ではただのダンボール板同然。
屋根へと取り掛かります。
組物を取り付け
欄干を取り付け。ダンボール表面の紙の部分を使用しました。
屋根は小さく、組物の配置に苦労しました。
屋根のてっぺんに載せる玉を作ります。曲面というか球体なので、ダンボールでの表現が難しい箇所となっております。
ダンボールの表面を剥がした紙を細く切り、
水と木工ボンドを混ぜた溶液に漬け、
丸めて固めます。まだゴツゴツしているのでさらに加工します。
ダンボールをちぎった紙をこの玉に貼り付け、やすり掛けをします。
やすりがけ中…
屋根に取り付けて、完成です。
柱もダンボールの皮。ニコニコ動画のコメントで、マカロニと言われました(笑)
柱と屋根を組み合わせるとだいぶそれっぽくなります。
翼廊を左右対称で製作。ここまでで3か月ほどですね。
続いて中堂を作ります。
ダンボール表面の紙を剥がして六角形に切り抜き、
中堂の壁に貼り付けます。
組み立てていきます。
屋根の組み物を作っていきます。
三手先組物ということで、過去作品で一番複雑なものです。
部品点数が増えてまいりました。
四隅は部品が集中します。
全て貼りつけ。ごちゃごちゃ感が良い。
もこしの屋根の柱を作ります。
組付け。上の屋根とのバランスが重要で、微調整が大変でした。
屋根には厚みがあり、内部に見えない柱を付けて補強します。
小屋組みは強度を出すため堅牢に作ります。
軒から小屋組みに掛け、屋根板となるダンボールを貼りつけます。
内部に柱を通していますが、パッと見薄い屋根。理想的な形になりました。
中堂の屋根構造について、少し詳しく解説したいと思います。
ダンボール平等院鳳凰堂 屋根構造
下から見上げると多種類のダンボールを使っていることがわかると思います。
松本城と守礼門では外観が見栄えする程度に簡略化しましたが、今回の鳳凰堂中堂の屋根の構造は、日本の伝統建築の構造をかなり真似ています。
通常、ダンボールで屋根の曲線を再現する場合、ダンボールの片面に切り込みを入れ、折り目ができないように曲げます。しかし、今作鳳凰堂の屋根は軒が大変長く、実寸で7cmもあります(松本城・守礼門は3cm程度)。この深い軒をダンボールで再現する場合、切り込みのせいで強度が足りなくなります。少しでも歪むと美しさが損なわれるので、強度は大変重要です。
手間はかかりますが、実物の柱と同じようにダンボール板を配置し、深くても頑丈な屋根を作りました。ちょっと指で押したくらいではびくともしません(ドヤァ…)。
あとは瓦を貼りつけていくだけ…
上から屋根瓦となる片面ダンボールを貼りつけていきます。
一見雑な屋根も、屋根瓦となる片面ダンボールを貼ると一気に完成に近づきます。
屋根瓦の寸法は現合で出します。完全に屋根の曲面に合わせます。
木部は以上です。続いて石材部の基壇を作っていきます。
基壇内部はダンボールの仕切りで強化しています。上から踏んでも平気な強度を持っています。
ダンボール製のお寺が載っても大丈夫。
最後に鳳凰を載せて完成です。
銘板を製作し、作品として仕上げました。
100均の筆ペンで書きました。もっと練習をして字も極めたいですね。
ちなみに…
失敗作達・・・テイク30はやってますね。
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完成
ダンボール製 平等院鳳凰堂
上から
翼廊側面から
中堂アップ
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あとがき
今回の平等院鳳凰堂、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、尾廊がありません。これは製作期間や作品の置き場所、実物の地形などを考えた結果省略したもので、削るかどうか、結構迷いました。一種の妥協ではありますが、この平等院鳳凰堂は正面性の強い建物で、裏側の再現度を多少犠牲にしても、正面から見たクオリティにはそれほど影響しないものと判断しました。
むしろ尾廊を再現することで生まれる作品自体のデッドスペースや展示の際の取り回しの悪さなどから、気軽に展示することができなくなることのほうがデメリットで、実用性(?)を考えると尾廊を作らない方が良いのです。実際、ニコニコ超会議等での展示スペースは一般的な長机程度しかなく、尾廊を展示するスペースはありません。運び込むにも巨大な台車が必要になり、とても個人で展示する意欲は沸きません。車にも積めません。作品の展示&保管スペースの問題は、多くのクリエイターさんの共通の問題かと思いますが、こればかりは周りの理解と経済力の勝負になってきてしまいますゆえ、全てを自由にはできません。
さて、そんな経緯で製作された今作ですが、2018年5月現在、私の代表作です。逆に言うと、これ以上の作品を今のところ作れていないのです。
大規模建築の製作はこれで一度終了し、以降は電動ギミックやネタに走っております。再び建築に戻るには、それなりの技量を蓄えてからでないと、見る人にとってもがっかりさせてしまうと思います。神社仏閣やお城等のリクエストをたくさん頂いておりますが、同じ技量で同じカテゴリの作品を作っても、私自身のメリットにならないので、もう少し修行をさせてください。
とはいえ今作を作り始めて5年。そろそろ技量も上がってきたところだと感じておりますので、新たな建築に取り掛かっている次第でございます。余談ですが、 今作をきっかけに「ダンボール建築の人」を拝命し、私自身も大変気に入りました。以降もニコニコで動画を上げる際にはダンボール建築の人というタグをロックして投稿しております。おかげさまで大百科もできました。
そろそろ再び建築に戻り、名前通りの活動を続けていければ良いなと思っております。